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一瞬ためらったが、菅井はすぐにパッシングを連発して対向車に異常を伝えようとする。相手がパッシングを返すが早いか、赤色灯が光るのが見えた。
しまった、ここでパトカーに出会うとは……!
数百メートルの距離が異常な早さで縮まるのを見てパトランプをつけたのだろう……間違いなくパトカーは菅井の車を停車させるつもりらしかったが、彼はスピードをゆるめることなく突進した。こんなところで車を停めて警官の相手をしていたら逃げられなくなってしまう……そう考えたのだが、パトカーはあるまじき暴挙に出た。
なんと二車線しかない狭い国道を、車を真横に停車して両車線をふさいでしまったのである。菅井にとって右が山林、左が用水路ではどうしようもなかった。
猛烈なタイヤの悲鳴をあげてパトカーの直前で車を止めると、彼はパワーウィンドを開くそばから声の限りに叫んだ。
「そこをどけ、あんた死にたいのか!」
パトカーを降りた若い警官は眉を吊り上げて声高に、なまりのきつい口調で言い返してくる。
「このクソタレが……なんてスピードで走ってんだ、早く車を降りれ!」
「ここで話し合っている暇はないんだ、早く、早く逃げないと……」
「降りれバカタレが!」
「そこをどけ!」
「キッサマ……切符だけですまねえどクソヤロウが……!」
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