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こんな押し問答をしていては時間の無駄だとばかり、たまりかねた菅井がブレーキから足を離したとたん、かなり遠くで何かが爆発したような重々しい『ボンッ』という音が聞こえてきた。
「こいつぁ………キッサマ、そこで待ってれ!」
警官はそういうとパトカーに駆け戻り無線機をつかんだ。
「こちら『らいちょう二号』、所轄本部応答願います。こちら『らいちょう』……」
菅井は全身にどっと冷たい汗をかき、出もしない生唾をゴクリと飲み込んでみる。ドアに体当たりするようにして車外に出た彼は、音がしたはずである【しかるべき】方角を見やった。
後ろは緩やかな右カーブで、道路沿いに延びる長大な田んぼの端までは一キロくらいはあるだろうか。さらにその奥、菅井が走り抜けてきた山林の中へと国道は延びており、山の裾野の陰に隠れて道はうねっている。
山裾からわずかに確認できるさらに奥の国道に、それは立ち上っていた。本物の巨大な黒煙に、ちらちらとはいずる炎………。
交通事故だ。しかもただの交通事故ではない。あれほどの爆発ならば、まずタンク・ローリーの爆発火災と見て間違いないだろう。
事故の原因はただひとつ………【その運転手】も、逃げていたのだ。
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