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途端に菅井の全身はわなわなと震えだし、歯の根も噛み合わぬほどの恐怖に身体の自由を奪われてしまった。
いうことのきかなくなった身体をジリジリと後ずさりさせて車に戻ると、菅井は警官に叫んだ。
「早く逃げろ!」
だが警官は菅井の声など聞こえぬかのように無線に向かってまくし立てている。菅井がクラクションを鳴らそうとした時、かすかなクラクションの音が耳に入った。
振り返ると、山林の陰から一台のトラックがぐらぐらと、だがかなりのスピードで彼らに向かって走っていた。
遠くからでもわかるほど運転席は無残に変形し、どうやらタイヤも妙な角度で回転しているらしかった。あの爆発は恐らく荷台のトレーラー部分が連結機を外れて樹木に激突したものだろう。なぜなら走ってくるトラックは、キャビンを半分潰したトラクター部分だけだったのである。
そしてさかんにクラクションを鳴らし、パッシングをしてくる。
そうだ、間違いない………あれが、あの黒い霧が、もう近くまで迫ってきているのだ!警官と押し問答している暇はない!
「………んや、なんとか自走してるべ!はやぐ救急車よこしてけれ、俺は該当車を停める!」
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