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「もしもし、課長をだしてけれ……なに、無線?パトカーなんざもうねえ……ンでねくて事故だ事故!はえくせってば!」
少しの沈黙の後、会話が始まった。
「課長、とんでもねぇモンが市内さ向かってらんだすよ。いまS村からバイパスさ乗ったところで………は?いや、強盗でなくて、なんつうか……そのう、まっ黒な霧みてえな煙りみてえな………ちゃんと聞いてけれ、もう後ろはすげえことになってて。何の話しもなんもねえ、署の三階からS村の方が見えんべ、とにかく見てけれ!」
確かに、このころには彼らの後方はとんでもない状態になっていた。地形が障害となって二人には見えなくなっていたが、いまやそれは一部では山を越え空にかかり、黒い尖塔のようになったところでは高さ三百メートルに届こうというものさえ出現していた。
「ちょっと待ってけれ、あんた、そこさ左さ入ってけれ」
会話を中断した警官は、菅井に指で合図をおくった。
「だめだ、そっちは市街地になる。止まっちまうぞ」
「ダイジョブだ、製錬所の私道がデカい国道につながってるから。それに署さ戻ってみんなに話さねばなんねえ」
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