39人が本棚に入れています
本棚に追加
菅井がナビを見ると、たしかにその道は大きい国道につながっており、ルート上では市街地を抜けて高速のインターチェンジへと向かっていた。警官は電話を切ると菅井に返し、後ろをじっと見てつぶやいた。
「ありゃいったい何だ。煙りでもねえし霧でもねえ……しかも車みてえなモノすげえスピードで進んできやがって……」
「あの中の人たちは……皆どうなってしまったんだろう、もしかしたら中で助けを……」
「死んじまったに決まってるべ!あんた見てたんでねのか、あんなに家も車も……杉林だって、のきなみ潰されちまってよう。あの中がどうなてってるかなんて考えたくもねえ!」
二人を乗せた車はそろそろ目につくようになった一般車両をなかば強引に追い越しながら、やがて国道に入り市街地へと侵入した。さすがに多少はすいているものの格段に多くなった交通量の国道を、まるで網の目を縫うようにして車線を変更しつつ菅井は突っ走る。
程なく通り沿いにあった新築の警察署に到着したが、ここまで来るのにすべての信号を無視し、事故を起こしそうになったのも二度や三度ではなかった。
縁石を乗り越えて署の正面玄関に車を乗りつけた菅井は、鉄砲玉のように車外に飛び出してゆく若い警官に向かって思わず声をかけた。
「この街は………ここに居る人たちを、どう説得したらいい?」
.
最初のコメントを投稿しよう!