第二章~避難~

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   そして、菅井たちを残し白いベンツは単独走り去ってしまった。  菅井たちも給油をすませると直ちに出発した。彼は妻を隣に乗せてナビを見ながら、今後どうするか考えあぐねていた。このまま走り続けるとして、いったいどこまで移動すればよいのか、現時点で彼に言えることはあまりに少なかった。  マスメディアによる報道だけが頼りの菅井にとって、状況がまったく把握できないのは当初とまったく変化がない。現実に見た物は多かったが、彼にはそれを検証する術も知識もないのである。それに残してきた知人や新たな友人のことを考えると次第に胸が痛んできた。  自分は逃げることに必死だったが、はたしてそれ以外にも出来たことがまだあったのではないか、知り合って間もないとはいえ会社の同僚にことを知らせることも出来た。  結果はどうあれ、加藤夫妻のように無理にでも連れてくることができたのではないか?たとえ最後まで信じてもらえなくともだ………。  菅井は、とりとめもない思考の流れを断ち切ろうと現実的な考えを意識した。同時に彼は自分に残された時間が次第に短くなってゆくのも感じ取っていた。 .
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