第二章~避難~

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   論理的な考えと、ぼんやりした直感の群れが接点を持とうとすると互いに反発し、ひとつの答えになってくれない。この現実からかけ離れた状況が、日常的な発想からの転換を求めていた。  高速をひた走る中ラジオからの暫定的なニュースが、ほどなく確実なる変異の拡大を告げてきた。  すでにA県のみならず隣接する他県からの通信さえ途絶しつつあることや地震、火災、原発事故等ありとあらゆる憶測と証言が混じり合っていた。事態の異常さと変異の急速な拡大が情報の混乱を招いており、このため報道機関は致命的ともいえる展開の遅れをとってしまったのである。  いま、決断しなければならない。  これ以上事態が悪化するまえに最善の行動をしなければ取り返しがつかない………みんなが気付いた頃にはもう何もかも手遅れなのだ。  彼は意を決した。  意を決し、妻に電話をたくして高速の分岐を抜け、自力でゆける最後の目的地へとアクセルを踏みこんだ。       †  始めの一機は、これから接近を試みるとの通信を最後に消息を絶った。  自衛隊は急遽二機目の探索用ヘリを用意し、高解像度カメラを載せて駐屯地から飛び立つはずだったが、そうはならなかった。駐屯地からの連絡はそれ以降、何処にも届くことはなかった。 .
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