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さわさわと風が頬を撫でる。
下に見えるさくらの木は、すっかり花も散り、若葉のあおに染まっている。
これくらいの気候が、一番心地よい。
わたしは、真っ白なベッドに腰掛けて、窓辺から下の歩道を覗き込むと、歩く人々を指差しながら傍らへ座る隆介へ教えた。
「あれは男。あの人は……胸があるでしょ、ほら。大きいでしょう。あれも、男。」
一通り教えて、彼の頭をそっと撫でる。
隆介は窓枠に頬杖をつきながら、わたしに問うた。
「ふうん。男ばっかりだね、女の子は居ないの」
わたしは、ふふ、と笑って、「わたしは、女の子だよ」と教える。
隆介は、綺麗な長いまつげをぱたぱたとさせてまばたきすると、「そんなこと、見ればわかるのに」と、美しく、優しく、わらった。
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