①台風景

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 昔、と言っても世界的に見ればそんな昔じゃないけれど。小さな姉弟がいた。  年で言えば四歳、五歳くらいだ。 「量、そんなに泣かないで?」 「だって……僕、おかしいんでしょ?」  その頃の僕は、周囲から毛嫌いされていた。皆が僕を不気味がって、僕に近付いて来てくれないのだ。  当事幼かった僕は、理由なんて皆目検討がつかず泣きわめくばかりだった。  とにかく僕から周囲の人達に歩み寄っていっても、まるで「風に飛ばされるように」離れていってしまう。  子供の溜まりやすいフラストレーションが行き着く先は、いつも灯姉さんだった。遊び相手も、灯姉さんだけだった。 「灯姉さんは――」 「?」 「どうして僕と一緒にいれるの?」 「だって、」  隣にいる灯姉さんはいつも笑顔で、いつも泣き顔だった僕とは笑えるくらい正反対だった。   「私、量が好きだもん」  姉弟として、だと思っていた。 「だから、繋がりが欲しいの。血じゃない、もっと別の……」 「んー、手を繋ぐとか?」  僕の曖昧な言葉に、灯姉さんはキツイ抱擁で応えてくれた。  その後だったんだろうか、僕は不思議と友達を作ることが簡単になった。
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