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何故、手の平を返したかのように友達ができ始めたかなんて分からない。
それどころか、友達の親御さんからも暖かな歓迎を受けるようになった。
「量、今日は何して――」
「ごめん灯姉さん、友達の所に遊びにいってきまーす」
「あ……、うん。いってらっしゃい」
外はいつでも豪々と風が吹いていたような気がする。思い出せる。
無くした記憶が沸いてくる。
いや、むしろはね上がってくる感じ。スーパーボールを叩き付けたら、予想外な程に高く高く上がるような――。
「いいぞ……どんどん思い出してきた……。ふふふ、ふははは!! は!?」
そこでフッと我に帰る。順調に記憶が再構築されすぎてテンションが上がってしまったが、ここは僕の部屋。しかも電気が消え、暗さは最高潮。
暗室、不気味な笑い、ご提供は僕こと本名 量(ほんな はかり)。
もしかして、もしかして今の僕って端からみたら――
「気持ち悪いやつなのか!?」
狭い部屋が虚しく僕の声を吸収していく。僕の駄目さが軍勢を率いて全面に押し出してきているようだ。
「まぁいい」
灯さん、いや灯姉さんを悲しませたことは申し訳ないと思う。本当なら、今すぐ灯姉さんの所に駆けつけて頭の一つも下げたほうがいいのかもしれない。
けどさ。
「とりあえず反撃だな、優希に」
僕はやられっぱなしじゃ、いられないんだ。
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