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「やぁ、久し振り…、
なかなか来れなくて…いや、
そうじゃない、来なかったんだな…。申し訳ない…」
体のいい挨拶をするつもりが、言い訳をする自分に醜悪さを
覚え、正直に《告白》をした。
「いや忘れた訳ではないんだ
けど、人間…どうも楽しい方に引っ張られてしまってね?」
━例え正直であっても、結局は言い訳になるんだな━
言いながら、自分の言葉に
良心が反駁していた…。
「そう言えば、この間…
貴子のトコへ行って来たよ。
ご近所内で引越ししたんだね?凄く豪華なマンションだった」
コートや帽子を脱ぎ終え、
クルクルッとひと纏まりにして窓辺の台の上に置き、
丁度その下にあった丸椅子を
手に取った。
ベッドに横たわった叔母は、
相変わらず向こうを向いて
いる。
叔母の顔の向いている側へと
ベッドを回り、丸椅子に尻を
下ろした。
濃く、長い彼女の睫毛が、
ゆっくりと重なり、また上下に別れた時…今日初めて互いの
視線が合った。
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