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「ねぇ、君、1人で来てるの? チケット代奢るから、今から一緒に観ない?」
「……え……」
「……」
な……なんだ?
見知らぬ男が久家川の隣に来たと思えば、馴れ馴れしく肩を握り、今から俺と見ようとしている映画に誘った……
「気になるよねー、この映画。ザックの新境地! ドラマで演じたセレブ社長も清々しい生き様だったけど、今回は雰囲気をガラリと変えてワイルド&セクシー! ……あ、もしかして引いてる? ザックとか言っても分からないか」
「……いえ、『one』シリーズなら観てますけど……」
「あ、ホント? season3まで観てる? 嬉しいなァ、俺の周りに海外ドラマ観る奴いなくてさ~、当然、ザックなんて言ってもダレソレ状態。ね、ホント君さえ良ければ一緒に――……」
「ンッウンッ」
「え……1人じゃなかったの?」
「……えぇ、まぁ」
わざと咳払いをして相手の注意を向けさせた後、繋いだ手を見せつけてやった。
男連れの女に声をかけるなんて、失礼にも程がある。まさか目の前で久家川がナンパされるなんて思ってもみなかったが……それだけコイツに隙があると――……
「ふーん……でも、なんか退屈そうだし……アンタこそ帰れば?」
「ハァ!?」
「どう? 今からでも俺に乗り換えて、映画観た後にカラオケでも行かない?」
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