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彼が言うには
「生きてる頃とあんまり変わらないんだ。奴らも元は人間だからな」
とのことだった。
「ふわふわ浮遊してる幽霊がいても、ジャンボジェットみたいに空飛ぶ幽霊は聞かないだろ。飛べないと思い込むから、飛ばない。いきなり壁をすり抜けようなんて思う幽霊は少ない。そこにドアがあれば、そこから出入りしようとする」
なるほど。分からなくはない。
彼は言った。
「冷蔵庫の外に出たら、次のドアは、この部屋の入口だ。玄関まで進まずに、目の前にあるドアをくぐろうとするかも知れん」
「え、この部屋に入って来ちゃうってこと?」
彼はうなずいた。
「可能性は高い」
そんなことを言われてもピンと来ない。交通整備みたいに
「出口はこっちですよ」
と赤色灯を振るわけにもいかないだろう。
「そこで盛り塩だ。それが置かれてるドアは通れない」
「あ、そっか。じゃぁ、ドアの前に盛り塩をすればいいの?」
「だな。で、お前はなつかれてるみたいだから、部屋の中にいろ」
「分かった」
うなずきながらも、あたしはホッとしていた。霊が入って来られない部屋の中でじっとしていればいい。
「絶対にドア開けるなよ」
「開けない」
開けるなと言われると開けたくなる人がいるらしいけれど、幸いにしてあたしは怖いのは大の苦手だ。ドアの向こう側に霊がいると分かっていたら、絶対に開けたりしない。
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