出会い

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「大丈夫、絶対開けない」  あたしはそう約束して、彼が部屋から出て行くのを見送った。扉がしっかり閉まったことを確認して、一人部屋に残る。  扉の向こうで、彼がなにかがさごそやっているのが聞こえた。 (っていうか、今さらだけど、すっごい怪しくない?あの人)  別に台所には貴重品もないし、下着の類も置いていないけれど、何をそんなにがさごそやっているのか気になってしまう。  もちろんそれでドアを開けるようなことはしなかったけれど、代わりに向こう側からは 「うぉおおおああああ!」 というとんでもない絶叫が聞こえてきて、あたしはビクッ!と震えてしまった。 「だ、大丈夫?」  一応声は掛けてみたけれど、返事はない。  ただ、ボソボソと呟く彼の声がして、その後にバン!ガタ!という音が聞こえて来ただけだ。 「てめええええ!このクソガキがぁあ!」  喧嘩でもしているかのような声がする。ご近所から苦情が来そうで心配だ。 (まさか霊と格闘してる?)  有り得ないが、そんなことを本気で考えてしまう。  その騒がしい音が突然、ぱったりと止んだ。 「あ、あのー…」  静かなのは不気味だ。あたしは極力早く彼と会話をしようと、恐る恐る声を出した。  かなりの間があって、やがて 「おー、もういいぞ、出て来い」 と彼は言った。 「ほんとに大丈夫?」 「まぁ、一応」  あたしはようやくドアを開けた。まず台所を確認し、そこに何も変化がないことを確認する。ただ冷蔵庫の前に、中に入っていたタッパや飲み物が出されていた。それから真ん中に立っている彼を見て 「どうなったの…?」 と聞いてみた。 「なんとかなった」 と彼は言う。 「でも一応、この冷蔵庫は使うな。冷凍庫は使えるから、そのまま使えばいい」 「え…」  最初は冷蔵庫なしでどうやって生活するんだと思ったけれど、たとえ中に霊がいなくなったと聞いても、もう二度と使いたくない気がしたので、あたしは結局うなずいた。 「うん、分かった」  冷蔵庫くらいリサイクルショップに行けば、安く売っている。また買えばいい。
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