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その日は結局、レトルトのパスタソースを使ったスパゲティを二人で食べ、彼を家に泊めた。
まさか自分が彼氏でもない男の人を家に泊めることになろうとは思っても見なかったのだけれど、多分一人になっていたら、怖くて家を飛び出して行ってしまったと思う。
これがあたしと彼の出会い。
ちなみに朱音はその二日後くらいには学校に来て
「なんか食中毒だったっぽい。お腹壊しちゃってさ、薬効かないからほんと困ったよ」
などと言っているのを聞いて、あたしは
(やっぱり)
と思った。彼の言う通り、うちのあの冷蔵庫の中にあったものを口にしたからだと思う。
一方でうちの牛乳を飲んだ彼は、翌日からも学校には来ていた。授業には出ていなかったけれど、食堂でちらりと見かけたのだ。
一応番号とメアドを交換はした。
「いつか冷蔵庫を取りに来る」
と言っていたからだ。
当時のあたしは怖いものから目を逸らし、ほとんど現実逃避に近いような感じで、毎日を明るく楽しく過ごそうと必死になっていた。放課後はギリギリまで友達と一緒にいて、夕飯は外食。
お金があまりない時は安いお惣菜を買って行って、極力余りモノは出さないようにする。
帰り道はコメディ映画を借りて帰る。眠くなるまではテレビのバラエティ番組を見たり、その映画を見たりして過ごす。
だが、この時からあのプーという男について、いくつかの疑問は抱いていた。
まず大前提として
(彼が霊を見ることが出来るというのは本当なのか)
という問いがあったのだけれど、あたしはこれは信じる事にしていた。
多分あたしの家の冷蔵庫には本当に何かいたのだろうし、あの冷蔵庫を使わなくなってからは、あたしの食欲も元に戻ったからだ。
朱音もあれ以来、変な病気にはなっていないと言う。
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