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それから彼はあの冷蔵庫の中の牛乳を飲んでおいて
「俺は大丈夫」
という自信を覗かせていたが、それは何故なのか。
よく思い返せば、確かに彼は霊に取り憑かれない方法というのを知っていた。
普通の人は
(霊が傍にいるかも知れない)
と思ったらお経を読んだり、わけも分からず謝ったりしそうなものだ。
「歌を歌えば大丈夫」
なんてやり方は初めて聞いた。
テレビでもよく夏にオカルトの特番なんかがあるが、歌を歌っている人なんか見た事がない。
しかし確かに歌を歌った時、自分が自分でなくなるような恐怖は簡単に去って行った。
それに彼に背中を叩かれた時もそうだ。
(彼には何か特別な力があるのかも知れない)
あたしはそう思った。
もし、そうだとしたら、一体どんな力なのか。
そして、彼は霊を追い出すのだと言って、あたしを部屋に閉じ込めた時に、一体何をやっていたのか。
まだあたしの家の冷蔵庫の中に霊はいるのだろうか。
もしいるとしたら、彼はその冷蔵庫を引き取ってどうするつもりなのか。
そんな沢山の謎を残したままだけど、ここで一度、あたしとプーの出会いの話しは切ろうと思う。
(もう余り関らないだろう)
と思っていたけれど、あたしはその日を境にしてプーと急速に接近することになった。
長くなるので、続きはまたいずれ。
ただひとつだけ確かに分かってるのは、彼が見た餓鬼のような子どもの霊は、成仏なんかしてないってことだけ。
きっとまだあたしのそばにいる。
彼が言っていた。その子どもの霊はあたしに懐いてるんだって。あれは本当だと思う。
だって、感じるんだもの。そばにいるって。
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