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プーは特別格好いいわけでも、オシャレなわけでもない。だから女遊びが激しいというわけではないだろう。
彼はヤバイと聞いて真っ先に思い付いたのが
(詐欺…?)
だった。
悩んでる人を見つけると
「俺には霊が見える。お前には霊が憑いている」
とか言い出して、金めのものを取っていく詐欺。
でも朱音はそうではなく
「なんかあいつ、ちょっとおかしいらしいよ」
と言う。
「はい?何がおかしいの?」
あたしはまたしても、きょとんとしてしまった。
「色々よ」
朱音が意味深な響きで言う。
「そんなこと言っちゃ悪いよ。っていうか、確かにちょっと変わった人だけど、別におかしいとか言うほどではないと思うよ?」
あたしが言うと、朱音は深いため息を吐いた。
「あんたは騙されやすいから心配なの」
「大丈夫だってば」
「そうだ。来週の金曜、飲みに行かない?」
話の流れをぶった切るというか、余りに急な方向転換だ。
「え…うん、まぁ、いいけど。何、突然」
「あいつのこと教えてくれた先輩がさ、前から誰か紹介してくれってうるさいのよ。会ってやってよ」
今度はあたしがため息を吐く番だ。
「最初っからそれが目的だなぁー?」
プーがどうのこうのと言うのは単なる話のきっかけに過ぎなかったに違いない。
あたしが軽くにらむと、朱音は
「ま、いーじゃん、いーじゃん」
とからっと笑った。
それからあたしは、少し意識をしてプーを見るようになった。
彼のが年齢はひとつ上だけど、留年をしているせいで学年は同じだ。
だから必修の授業で出席を取る時は彼の名前ももちろん呼ばれる。でも、出席率は二分の一くらい。
(また留年する気なのかな)
別にあたしが心配してやる義理はないけど、うちの学科は割とゆるくて真面目に出席さえしていれば、レポートやテストが駄目でも単位をくれる先生が多いだけに、留年生というのはかなり珍しいのである。
じゃぁ、プーは大学に全然来ていないかと言えば、そうでもない。
校内で一人でいる所をよく見た。食堂で会う率が一番高く、次が図書館。中庭でもたまに見る。
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