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ヒロヤ先輩が首を横に振った。
「あいつはヤバいって。なんかオカルトグッズ集めて回ってるって噂だし、心霊写真を撮りにそういうスポットに行くらしいよ」
「うげ…それは趣味悪すぎ」
朱音がげっそりと青い顔をした。
キョン先輩は髪をかき上げて
「俺はそんなもの信じないね。心霊写真なんてあるわけないだろう」
と肩をすくめる。
「ですよね。あたしもないと思います」
あたしはわざと明るい声を出した。怖いものは苦手だ。だから信じたくない。
でもこういう時に怖い話をしたがる人と言うのは、必ず誰か一人いるものだ。
「でも俺、超怖い話知ってるよ。女の幽霊の話なんだけど」
そう目を輝かせたのは、ヒロヤ先輩だ。
「ちょ…っ やだ」
聞きたくないと首を横に振ったのだが、ヒロヤ先輩はニヤニヤと笑った。
「だーって、カナちゃんは信じないんでしょ?じゃぁ、いいじゃん」
こういう人を相手にすると面倒くさい。こっちが怖がれば余計に調子に乗ることを、あたしは知っていた。
「別にいいですけど」
そう言っておいて、適当に聞き流すしかない。ヒロヤ先輩は身を乗り出し、両手をテーブルの上に組んだ。
「俺のおじさんが、東北に旅行に行った時の話なんだけどさぁ…」
こういう怖い話というのは、大抵の場合が自分が体験したものではないことが多い。友達の友達だとか、遠い親戚だとか、そういう
「人から聞いた」
というものだ。
彼が声を低くして語り始めた話は、どこにでもあるような、しかし典型的だからこそゾクッと来るような怖い話だった。
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