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それから、おじいさんはあたしを正面から見て、こう言った。
「私が思うに、カナさんはとても素直で、良い気の持ち主だ」
「え?」
突然褒められて、あたしは咄嗟に反応できず、きょとんとしてしまった。
おじいさんが優しく微笑む。
「他の人にはない力が、あなたにあったとしても気にする必要はない。気枯れないように、しっかり自分を持って、真っ直ぐに進みなさい」
「…はい」
なぜか、あたしはその言葉に少し泣きそうだった。
嬉しかったからとか、切なかったからとか、言葉では表しにくいのだが、何か温かな微温湯に全身が包み込まれるような安堵感があったのだ。
幼い頃のプーも、おじいさんにそう言われた時は、同じ気持ちだっただろうか。
力があることを認めてくれる人がいて、いつでも門を開けて待っていてくれる居場所を見つけて、彼も安心しただろうか。
「さて、」
とおじいさんが少し声のトーンを上げる。
あたしはじわりと浮かんだ涙を慌てて拭った。
「お腹は空いたかな?そろそろ食事にしようか」
おじいさんに言われて、あたしは笑みを見せた。
「はい…っ」
「二階に行って、あの子を呼んで来てくれるかな」
「分かりました」
あたしは一度頷いて立ち上がり、二階のプーの元へと向かった。
自分に霊感があるとか、プーのおじいさんと二人で話をするだとか、不安や緊張が解されて、その頃には、あたしの気持ちはかなり軽くなっていた。
二階のプーの部屋をノックすると、内側から
「んー…」
と寝ぼけた声が返って来た。
どうやら寝ていたらしい。
「入るよー?」
ドアを開けると、ベッドでゴロゴロしているプーが寝ぼけ眼でこちらを見ている。
「プーのおじいさんと話して来たよ」
あたしがそう言うと、彼はぼさぼさの頭を掻きながら
「ふーん、そか」
と呟く。
「おじいさん、優しくていい人だね」
「そうか?」
プーは欠伸を噛み殺し、それからのっそりと起き上がる。
まだ彼が寝ぼけているようなので、あたしは
「プーも優しいよね」
と言ってみた。
「あ?」
流石に面食らったように、プーが目を丸くする。
しかし、それは本心だった。
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