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プーは、あたしに
「俺はお前の助力者にはなれないけど、うちのじーさんならなれる。だからじーさんに会わせたい」
と言っていた。
だから一緒に山形に来たのだが、おじいさんがあたしに言うであろうことを、プーはなんとなく予測していたはずだ。
そして、予測していたのなら、プーがあたしに同じことを伝えても良かったはずなのに、彼はそうはしなかった。
多分、プーに
「お前は、たまたま人より不思議な力が強いだけだ」
とか
「気持ちをしっかり持てば、大丈夫だ」
とか言われたとしても、あたしは本当の意味では、それを理解できなかっただろう。
あたしをマレビトとしてお祭りに参加させたり、そこでハレとケについて教えてくれたり、この村の成り立ちや、顛限院が何のためにあるのか、気枯れとは何か。
色んなことを知ってからではないと、おじいさんが言っていた言葉の本当の意味を、あたしは理解出来なかった。
(山形に来て良かった)
そう思った。
「プー、山形に連れて来てくれてありがと」
あたしが言うと、プーは唖然としたようにぽかんと口を開けた。
「口、開いてるよ?」
慌てて口を閉じた彼が
「お前が急に変なこと言うからだろっ?」
と目付きを鋭くさせる。
「全く…どうして、あの優しいおじいさんと一緒にいて、プーはそんなへそ曲がりになったのかしら…」
思わず真剣に呟くと、彼はますます機嫌悪そうに
「しゃがましー」
とそっぽを向いた。
「うるさいって意味だっけ」
「そーだよ」
ふん、とプーが鼻を鳴らした後
「で、お前は何しに起こしに来たんだよ?」
と眉を寄せる。
「あ、そうだ。夕飯の時間だから、降りてらっしゃいって、おじいさんが。行こう」
まだベッドの上にいるプーの腕を引っ張ると、彼は
「引っ張るな」
と文句を言いながらも、大人しく付いて来た。
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