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「呪いって…プーのひいひいおじいさんは、そう言うことが出来る人だったの?」
あたしが尋ねると、プーは曖昧に頷いた。
「陰陽道に呪術があることは確かだ。動物や式神を媒体に、その土地や人を呪う方法ってのが、実際に経典にある」
それこそ陰陽師が大活躍した平安時代や、日光東照宮を作った江戸時代には、そのような呪いや、逆に呪いを解くことなどを、権力者に頼まれることもあったのだろう。
しかし
「経典にその方法が載ってるってだけで、顛限院は民間陰陽師だし、実際にどこかに呪いを掛けたとかって話は聞いたことがない」
とプーは言う。
呪いを掛けること自体、禁忌とされているらしい。
「人を呪わば穴二つって言うだろ?」
とプーは首を傾げた。
「うん、聞いたことある」
人を呪ったり憎んだりしたら、自分もやり返されることを覚悟しろ、と言う意味だ。
しかし、それについて
「その言葉、陰陽師から生まれたんだ」
とプーから聞いた時、あたしは驚いてしまった。
「え、そうなの?」
「あぁ。呪いには、呪い返しってのが付き物でな。呪いを行う陰陽師は、儀式の前に、相手と自分の分、二つの墓穴を用意させたんだ」
「へぇ…」
とにかく、呪う者にもかなりの危険と負担が伴うと教えられていて、顛限院では呪いの方法は一応知ってはいるが、生きている人は誰もやったことがないのだそうだ。
「要するに効果があるものなのか、誰も知らないってこと」
プーはそう言ったが、彼のひいひいおじいさんが
「自分自身に呪いを掛けた」
と言う話が、家族に言い伝えられているのは事実である。
それについて、プーは
「自分に呪いを掛けるなら、呪い返しの心配もないし…そもそも即身仏になるつもりだったなら、死ぬことは確定してるんだから、呪いの代償も障害にならなかったんだろう」
と言う。
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