山形・最終日

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 それから、プーは 「うちのじーさんの話だ」 と、恐ろしいことを語り出した。  昔から、日本には人間の内臓が妙薬になると言う、民間の伝承があったのだと言う。 「江戸時代までは、堂々と人間の肝臓を干したやつを、薬だとして正式に売り出してたくらいだし、まぁ、それ自体はどうってことないんだが」  実際に昭和の後期でも、その民間伝承は信じられており、昭和40年くらいまで、全国各地で土葬の遺体を掘り起し、その肝臓や骨を病人に与えたと言う事件で、逮捕される新聞記事などが珍しくなかったそうだ。  昭和40年。今から50年前まで、そういう事件が起こっていたのだ。 「うちの村でも、昭和中期に墓を掘り起こされたことがあった」 と、プーは言った。  ただお墓を掘り起こされるだけであれば、まだ問題はなかったのだろう。 「人体が霊薬になるって言い伝えを信じてる奴が、うちの村で土葬をしてるってことを知って、墓を掘り起こしに来たってなら、まだ分かるんだ」  いずれにせよ、あの村では土葬した後、墓石を置くと言う習慣がないから、外部の者が墓を掘り起こそうとしたところで、どこに埋められているのかは分からないだろうと言う。  しかし、プーはこう続けた。 「うちのひいひいじーさんが埋められた場所を、誰かが掘り起こそうとしたらしい」 「それって…」  どういうことかと思ったら、プーは 「呪いの込められた即身仏だ。埋められた場所は、村人しか知らないはずなんだよ」 と言う。 「要するに…」  彼は暗い笑みを浮かべた。 「土葬したひいひいじーさんの墓を掘り起こそうとしたのは、うちの村の奴なんだよ」  土を掘り返した痕跡を、プーのおじいさんが実際に目にしているのだと言う。  掘り起こされた場所は、実際にプーの高祖父に当たる人が埋められた場所に、かなり近かったそうだ。 「同じ村に裏切り者がいたんだ」  彼はそう言って、クッと笑った。
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