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「そっか」
とは言え、まさかお墓参りに来るとは思っていなかったから、お花やお線香の類を持って来ていない。
が、プーは
「んなもん、なくていいよ」
と笑い、静かにその場で手を合わせた。
名前も分からぬ、仏僧の墓の前。
手を合わせたプーは、そっと目を伏せ、黙祷を捧げる。
その仕草が、食事の時の
「頂きます」
の挨拶のものととても良く似ていて、あたしはハッとした。
(もしかして…)
とは思ったが、今は聞く時ではない。
あたしも手を合わせ、目を閉じ、祈りを捧げる時だ。
「……」
しばらくすると、プーは顔を上げ
「帰るか」
と呟いた。
「うん」
立ち上がったプーは、腰をひねってポキポキと鳴らし、さり気なくヒョイとあたしのボストンバッグを担いだ。
あたしがきょとんとしているうちに、彼はしれっとした顔で
「トロトロしてっと置いてくぞ」
と先を歩いて行ってしまった。
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