最終章 風の行方

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「俺は不妊症なんだ。精子の濃度が極端に少ない。だから子供は出来にくい。 別れた女房との間にも子供がいなかった。最初はうちの奴が不妊症だと思ってた。しかし友人の医師の勧めもあって結婚して二年目ぐらいに、あまり出来ないから二人とも検査を受けたんだ。 子供欲しかったからね。結果は、俺に原因があったってことだよ。方法によっては、つくれないこともなかったけど。その後はうちの奴の子宮筋腫の手術で諦めた」  どういうこと、何を言ってるの、胸が締め付けられる。 ユウさんの気持が解らない。 「子供が出来ないってわかってから、慶子とうまくいかなくなったような気がしてたけど……                                                あいつが福岡に帰ったのはそれから暫くしてからだったから。だから別居の原因はそれだと思っていた。違ってたけどね。 まさかアヤの影を引きずっていたのを、見抜かれていたなんてね。それは今となってはどうでもいい事なんだけど」  ユウさん、何が言いたいのだろうか。 自分の子供じゃなくても、受け入れるというのか。
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