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徐々に彼は近付いてきた。そして、私の目の前で止まり、ルビーのように赤い瞳で私のほうをじっと見下ろした。
『白い髪……赤と金の瞳……。黎明が言っていた奴だ……』
独り言のように呟くと、彼は黙って私に手を伸ばしてきた。手を掴んで立てと言っていたのだ。私はそんなこととも気付かず、なんとなくで彼の手を掴んだ。
しかし、掴んでその後どうすればいいか分からず、そのまま止まってしまった。
それを知ってか知らずか、彼は私の手を強く握り締め、真上に引っ張り上げて私を立たせた。その勢いで一瞬立つことが出来たが、余って倒れかけ、彼に肩を掴まれ支えてもらった。
彼は私より頭ひとつ分背が高く、白く丈の長い服を着ていた。そして、私の目を惹き付けたのは、私のより透き通る銀色の髪。
『待っていた……お前を……。俺と同じ──……』
私をまっすぐに見据え、彼は微笑みながら言葉をかけた。銀色の毛先をわずかに揺らして。
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