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言わなくちゃ。
もともとは、大和さんに相談するつもりだったのだから…
「お父さんなら、お昼に出て行った。」
私は俯きながら話した。
「おいおい、愛音。冗談は言っちゃいけないよ。
ましてはそんな重い話。」
拓也お兄ちゃんは真顔で怒った。
それでも私は続ける。
「だから、この万年筆をもらった。」
この万年筆はお父さんが一番大切にしてたものだ。
お父さんの初めてのお給料での自分へのプレゼントだ。
そしておじいちゃん、おばあちゃんに温泉旅行もプレゼントしたそうだ。
しかし月末にお金がなくなりおじいちゃんの家にお世話になったという、微妙なオチがある。
そんなに大切なものを私に渡して行ってしまったお父さん。
「やっとケンカから解放されたよ…
これで怒鳴り声も泣き声も聞かなくていい。
愛夏も私と寝なくてすむ。
やっと…だよ…」
私は言い終わらないうちに泣きだしてしまった。
「お兄ちゃん、お母さんは愛夏に何も話してない。
愛夏は何も知らない。
どぉすればいいの?」
私は泣かないようにしてたのに泣いてしまった。
いや、さくらさんのことがあったから、拓人が泣いたから自分は泣いちゃダメだと言い聞かしていたのかもしれない。
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