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マリアは一軒の家の前に着くと足を休めた。 以前ここに来たのは2ヶ月ほど前だ。 彼らにも知る権利がある。 マリアは『渡部』と書かれた表札の下にあるインターフォンを押した。 中から出てきたのは、渡部美樹だった。 「刑事さん」 彼女は静かにそう言った。 マリアは頭を深く下げた。 彼女に案内され家に上がるとテーブルの上に置かれていた手紙に気付いた。 マリアが見ていると美樹が言った。 「誰かの悪戯ですよ。」 その声は沈んでいた。 「悟くんはどこに。」 「あの子、夫が死んでからよく一人で何処かに行くようになったんです。たぶん気分を紛らわす為に。だから、行き先は聞きません。」 そうですか、と言ってマリアは視線を手紙に戻した。 この手紙は悪戯だろうか。 そのようには思えないと、自分の勘が訴えていた。 ただ疑問点が一つ。 なぜ渡部悟宛てに手紙を送ったのかだ。 「どうぞ。」 美樹はそう言ってマリアの前に紅茶の入ったカップを置いた。 マリアは礼を言うと一口啜った。 そして気付かれないよう鼻で深呼吸すると言った。 「実は犯人を捕まえたんです。」
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