6人が本棚に入れています
本棚に追加
マリアは一軒の家の前に着くと足を休めた。
以前ここに来たのは2ヶ月ほど前だ。
彼らにも知る権利がある。
マリアは『渡部』と書かれた表札の下にあるインターフォンを押した。
中から出てきたのは、渡部美樹だった。
「刑事さん」
彼女は静かにそう言った。
マリアは頭を深く下げた。
彼女に案内され家に上がるとテーブルの上に置かれていた手紙に気付いた。
マリアが見ていると美樹が言った。
「誰かの悪戯ですよ。」
その声は沈んでいた。
「悟くんはどこに。」
「あの子、夫が死んでからよく一人で何処かに行くようになったんです。たぶん気分を紛らわす為に。だから、行き先は聞きません。」
そうですか、と言ってマリアは視線を手紙に戻した。
この手紙は悪戯だろうか。
そのようには思えないと、自分の勘が訴えていた。
ただ疑問点が一つ。
なぜ渡部悟宛てに手紙を送ったのかだ。
「どうぞ。」
美樹はそう言ってマリアの前に紅茶の入ったカップを置いた。
マリアは礼を言うと一口啜った。
そして気付かれないよう鼻で深呼吸すると言った。
「実は犯人を捕まえたんです。」
最初のコメントを投稿しよう!