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二人は三階へ向かった。 階段を上がってすぐのところに『302 早川宏文』と書かれた部屋が見られた。 表示では在室となっている。 マリアがノックしたが中から返事はなかった。 彼女はどうしようかと悟を見たが、彼は戸惑うことなくドアを開いた。 中は小汚なく、まさしく理系の人間の部屋という感じだった。 机の上に置かれた資料に目をやる。 『IPCC 2007 AR4』 マリアには何のことか全く検討がつかなかった。 部屋の奥に進んでいったが中に人がいる気配はしなかった。 悟は机に置かれたノートパソコンを開いた。 電源を入れると次々にファイルを開いていった。 「何してるの。」 マリアが厳しい口調で言ったが悟は全く耳をかさない。 ファイル一つに、『IPCC』と書かれたものがあった。 開くと膨大な量の人名が出てきた。 その全てがローマ字表記になっている。 「すごい。」 悟は呟くと財布からUSBメモリーを取り出し、パソコンに繋いだ。 ファイルを読み込んでいる時に遠くで叫び声が聞こえた。 すかさずマリアが外の様子を伺う。 数人の白衣姿の者がトイレの辺りに集まっていた。 ただ立ち尽くして何かを見詰めている。 マリアが近付いて見ると、そこには血を流して倒れている男性がいた。
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