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現場は騒然としていた。
府警が棟を封鎖したのは良かったが、その前は事を聞きつけたマスコミや学生でいっぱいだった。
マリアは棟の中にいた。
東警部がやって来ると、ばつの悪い顔をした。
「それで、何故ここにいる。」
彼はマリアとその隣にいた悟に訪ねた。
「これは連続殺人です。」
マリアが言った。
東は不思議そうに二人を見詰めている。
「どういうことだ。」
マリアは政府が関わっているかもしれないとは言えなかった。
この状況下で誰を信じていいかわからないのだ。
三つの事件には必ず繋がりがある。
同じ手口、同じ職業をもつ被害者。
三番目の被害者、早川宏文は帝都大の学生時代、悟の父と研究のパートナーだった。
研究テーマは『気候変動による海洋と生態系への影響』。
彼らはそれを物理的に研究した。
その論文は世界的に評価を受けた。
その後、二人は若いうちからそれぞれ今の大学に勤務するようになった。
二人は最近も共同実験を行っていた。
それが『地球温暖化』だった。
「不都合な真実です。」
悟は東警部を見て言った。
「何。」
「この世は不都合な真実で溢れている。」
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