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その後は何も覚えていない。
それほど、その出来事は体内を駆け巡った。
ただ、同僚の話では、自らと大木に憤る戸田に引っ張られ、帰社したらしい。
気がついたら、デスクに座っていた、という感じだった。
ふわふわと浮く心。
一気に墜落して。
部長に怒られ、ハッと我に帰った。
今日もう帰れ!それ相応の処分は覚悟しておけ。はっきりと聞こえたのはこの声だけだった。
漠然と会社を出た。
戸田が、走って追いかけてくる。
行き交う人の中、大声で戸田が言う。
「すいませっした!!」
深々と頭を下げる戸田。
何かが、キレたんだろう。
「なんでよ!なんであんなことしたのよ!関係ないじゃない!」
街の中で恥ずかしがることもなく声を荒げる友里。
ようやく息か切れたころで、戸田が頭を下げたまま言う。
「━━━っきだから!」
「はっ?」
「自分先輩に惚れてますから!」
まるで高校時代に置き忘れたようなセリフだった。
「私は、許せない。」
そう言い放ち、友里は頭を下げる戸田を後にした。
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