エルディリア=ベルツドール

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王宮の最奥。 王家の寝所のさらに奥。 小舟を浮かべられるほどの大きな池がある。 その池に入り、ただの崖のように見えた岩壁の下には洞窟のような場所があった。 そこは、人が来るような場所には見えないのに、蝋燭には火が灯り、暗い道を照らしている。 池の中に潜らなければ来られないこの洞窟。 もちろんこの人物も池の中を通って来た。 なのに、その女性の服は、少しも濡れていない。 茶色いきつく縦に巻いた髪は、水滴一つ滴らせていない。 赤いドレスを翻して、天井から水滴が落ちるジメジメとした道を歩く。 一本道なので迷うことはないだろうが、一人で来たい所ではない。 暫く歩くと、場違いに繊細な紋様の壁がある。 酷く呪術的な大きな目玉紋様。 それに手を翳すと目玉紋様が、壁から浮かび上がり、壁がせり上がる。 入って行った先には、左右に3体ずつ、計6体の像がたっている。 彼女の身長よりも大きな人型の像は、額の紋様と色が違うだけで、どれも同じ形。 獣のようではあるが二足で立ち、手には剣と盾を持っている魔物である。 一様に厳しく睨み付けるような顔で、彼女が入って来た扉からまっすぐ先にある階段上の壁を見つめている。 彼女はどこから出したのか知れない六つの掌大の玉を持っていた。 六色の玉を、それぞれ同じ色の文様のある像の前の窪みに入れる。 全て入れ終えると、像の額の紋様が光り、階段上の壁がせり上がった。 小さく息を吐いて、彼女は階段を上がる。 胸を張り、笑顔をつくり、少々緊張した様子を見せながら、ゆっくりと階段を上がっていった。
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