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「ベルツドール嬢?」
高い天井ギリギリまでの本棚。
円形の部屋の入口を除いた壁沿いに、びっしりと並んでいる本棚。
その本棚でも足りない、と言わんばかりに机の上に積み上げられた本。
天井は窓一つなく、紋様が描かれているだけである。
「ベルツドール嬢?」
茶色い髪の女性が眉を寄せて部屋を歩き回る。
本を踏まないように、高いヒールの脚を上げる。
「五大老のティエマ=カンディマル。確か、去年還暦だったのではなかった?」
本棚の上部。
ティエマの目の前にある梯子の上に、人の姿がある。
ゆっくりと梯子を下りると、彼女はティエマの目の前に立った。
黒い真っすぐな長い髪と、紫色の瞳。
黒いローブは丈が長く、足首を隠してある。
「還暦だったわ!悪かったわね!」
「悪いなんて言ってない。私は米寿もとっくに過ぎた」
椅子に進めるでもない彼女だが、ティエマは気にした風もなく手近な椅子に腰掛けた。
「最近は、魔法の綻びも多くて。見て、目尻にしわよ!」
「私が魔法をかけようか?」
「結構よ!あーもう!可愛いげのない!」
ティエマは、脚を組んで自分の膝に肘をつき、遠慮もなく彼女を見つめると、大きく息を吐いた。
「初めて貴女を……エルディリア=ベルツドールを見たときは感動したわ」
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