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目を煌めかせて、ティエマはエルディリアを真っすぐ見つめた。
「私にとっては、貴女は歴史書の中の人物。神秘に包まれた最高の魔導師一族。悪名の方が大きいけど、私は好きだわ」
困ったように目を逸らして、エルディリアは梯子に寄り掛かった。
そういえば、初めて会った時は大変だった。
と、懐かしく感じた。
「それが、会ってみると、本を読むか寝るかのどちらかしかしない変人」
「……変?」
至極く真面目な顔で変人呼ばわりされたエルディリアが、頭を押さえる。
変人と言われても、ここでは寝るか本を読むかしかできないのだから仕方がない。
「最高の魔導師が……」
「ティエマ=カンディマルは、今王国一の魔導師ではないの?」
最高の魔導師は、ティエマの方だ、と思い問い掛けた。
すると、憮然とした表情で、瞳の煌めきを消しエルディリアを見た。
「明日にはそれも貴女に返上よ。貴女はカエサル王子の五柱臣に選ばれたわ」
「私が?」
「そうよ。貴女が。まぁ、当然といえば当然かしら?」
そう言って自慢げに笑うと、ティエマは右手を掲げ、掌から白い光の塊を天井に打ち出した。
天井の紋様が消え、ゆっくりと丸い何かが下りてくる。
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