イヴェール=アヴェスター

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イヴェールは、深く頭を下げて老人の元まで移動すると、部屋の中央にあったソファーを勧めた。 書類だらけのテーブルを、慌てた素振りで片付け、慣れない手つきでティーポットを用意しだした。 「おやおや……どれ、私がやりましょうかな?」 「そんな、クシャスラ様にやらせるわけには……」 「イヴェール殿。どうせ飲むのなら美味しい紅茶の方が、私は嬉しいですぞ」 意地の悪い笑みを浮かべて、イヴェールの手からティーポットを取ると、慣れた手つきで紅茶の用意を始めた。 クシャスラの座れと促す手に従い、渋々といった表情を見せて、イヴェールはソファーに腰掛けた。 「それほど時間は取らせませんが、お話があってな」 二つのティーカップを持って、クシャスラがイヴェールに近づいた。 湯気の立った琥珀色の紅茶をイヴェールの前に置くと、テーブルを挟んで、イヴェールの反対のソファーに座った。 「なにか、不備でも?」 「いいや、いいや。いい仕事ぶり。感心してますぞ。」 大袈裟に手を振って否定するクシャスラ様子に、イヴェールは肩の力を抜いた。 「話というのが、第二王子の五柱臣に選ばれたということでな」 「は!?」 「まぁ、それだけじゃ」 「え、あの……」 「紅茶、美味であった。良い茶葉を使っておりますな」 そう言って、混乱するイヴェールを無視して、素早く紅茶を飲み干し、クシャスラは早々に部屋を出て行った。 イヴェールは呆然としたまま机に向かっていたが、部下である文官たちが、文官達に言われるままに、仕事を進めることなく城を後にした。
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