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カエサルの部屋よりも二回り以上狭いとはいえ、十分な広さのある部屋の中央には、ガラスのテーブル。
それを囲むように、黒革のソファーが、二人掛けと一人掛けが二つずつ。
エルディリアはその内の二人掛けを一人で使い、マントのないサマルは、入り口に背を向ける位置の一人掛けソファーでシエルシエのいれた紅茶を飲んでいた。
「シエルちゃん。王子さんは?」
「準備が出来たら、来るそうですよ」
「なんだ、王子さんまだ寝てたのか」
苦笑するシエルシエの後ろのドアが、ノック無しに開いた。
「寝てちゃ悪いの?第一、君……」
「サマル=クレスタですよ」
眉間にシワを寄せて、サマルを睨むように見たまま言葉を詰まらせたカエサルに、サマルは口角を上げて笑い、立ち上がって膝を付き、頭を下げて名乗った。
「サマルが来なかったら、まだ寝てられた。何しに来たの?って言うか、何?俺って、そんなに気安く尋ねて来れるような奴だっけ?」
「いえいえ、そうじゃないですよ。王子さんに助けてもらおうと思いまして」
「なにそれ。俺、嫌いだな。そういうの。助けを求める前に、努力はしたの?」
不快いさを隠すことなく、腕を組んで視線を逸らすカエサルを、サマルは意に介した様子を見せずに、笑顔で顔を上げている。
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