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「しましたよ。ここまで人一人を運んでくる、っていう努力を……」
「ふーん。で?」
あまり興味を示した様子もなく、サマルが座っていたソファーの前にあるソファーに座り、腕を組む。
カエサルの後ろにあるガラス窓から、東塔の後ろに朝日が見えはじめた。
「王子に、彼女を預かっていただこうと思いまして」
「なんで?」
「家が解れば俺が連れていきますけど……」
話ながら再びソファーに腰掛け、生温い紅茶に口を付けた。
「俺が知るわけないでしょ?ねぇ、その気持ち悪い喋り方は、嫌味?態度は正そうとしないのに、喋り方だけ正そうとするの、気持ち悪いよ」
「それはすみませんね。で、王子。エルちゃん預かってくれますか?」
あからさまに引き攣った頬を隠さず、足を組んで背もたれに寄り掛かった。
シエルシエは、カエサルの前に紅茶を出し、部屋の入り口横に立った。
「シエルも座れば?」
「え、私は……」
「王子さんは心が広いな」
「別に、俺は態度とか気にはしないけど?好きにすれば良いよ」
シエルシエは、空いているソファーに浅く腰掛けた。
しばし無言で見つめ合う中、カエサルが口を開いた。
「預かってもいいけど、迎えに来るんでしょ?」
「おー。起きたら家に連れていく」
「無いんじゃない?聞いたことないよ、ベルツドールの家なんて。今は壁と柱だけになった、あの街外れの屋敷跡以外はね」
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