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何かを考え込んでいる様子のサマル。
急な沈黙に戸惑い、話題を探すシエルシエ。
元より場の空気など気にしないカエサル。
三者三様の反応を見せる、早朝の使われていない部屋に、落ち着いたノックの音が響いた。
「はいっ」
助かったとばかりに、シエルシエは顔を跳ね上げ、立ち上がりドアに向かう。
シエルシエが引いた扉の向こうには、白髪に白い長い髭と眉毛の老人、ヴィステム=クシャスラが立っていた。
「ほう。五柱臣が三人もお揃いとは。良い傾向ですな。親睦を深めておられたのですかな?」
「違う。勝手に押しかけてきた」
ほっほっほっほ。と、予想通りといったふうに笑いながら、クシャスラは室内へと歩く。
慌てて立ち上がるサマルを手で制し、シエルシエが座っていたソファーの端に腰掛けた。
その様子を、見たシエルシエが、カエサルの後ろに立とうと移動すると、正面を向いていたクシャスラの顔が、ぐるりと回り、眉毛で見えない目でシエルシエを見つめた。
「なにをしておられる。お掛けなさい」
「あ、はい」
普段ならば遠慮する質のシエルシエも、反論できずにクシャスラの隣に浅く腰掛けた。
力の入った肩が、彼女の緊張の度合いを物語っている。
「と、座ってみましたがな、座るほど長い用件ではないのです。明日、エリヤ王子の五柱臣候補とエリヤ王子。カエサル王子の五柱臣とカエサル王子に向け、後継決めの説明を行うので、ご連絡に参った次第です」
「もう?」
五柱臣との顔合わせからまだ一日経っていないが、後継決めの日はすぐそこまでやって来ている。
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