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クシャスラは、宣言通り早々に部屋から去った。
朝日が城下街の町並みの上に円を描き出した頃、サマルは仕事へと向い、それとほぼ同時に、一人のメイドが、シエルシエに客が来たと、彼女を連れていった。
やることもないカエサルと、寝ているエルディリアだけが部屋に残された。
当然、部屋は静寂に包まれ、外の音がドア越しによく聞こえる。
正面にある棚に乗せられた、細かい紋様の彫られた木製の時計の短針の音が一番の大きな音だ。
エルディリアをどうするべきか考え込むが、彼女が起きないことにはどうしようもない、とエルディリアの下まで移動し、強く肩を揺する。
「ねぇ、起きてよ……そういえば、なんで寝てるの?」
疑問に答える者はなく、カエサルの溜め息とも言えぬ大きく吐き出された息と、エルディリアの小さな寝息が聞こえた。
「第一、何が五柱臣だよ。誰も本気で忠義なんて持ってないのにさ、無理してる」
「口先だけだよ。だって、俺が仕えられる理由が無い」
「俺が王になれば、彼等は一生、こんなのに仕えなきゃならないんだ」
「そんなの、嫌じゃない?なら、兄上が王になって、俺はどっかの外国に婿入りしてさ、大司教と君は監視付きだけど、変わらない生活して、他の人達は、早い自由生活が出来ると思って過ごせばいいよ。金は国からある程度出るらしいし」
テーブルに座り、目の前のエルディリアに言っているかのような素振りでまくし立てる。
エルディリアに視線を合わせないためか、先程から止まった寝息にも、開かれた紫の目にも気づかない。
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