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「まぁ、なにも考える必要ないよね。兄上が、王になるんだ。でも……君達は、もったいないと思う……けど、ね」
歯切れ悪く言葉を切り、カエサルは窓の外に視線を向けて黙り込んだ。
キラキラと日光で輝く、ゴールドプラチナを、エルディリアはぼんやりと見つめ、寝ぼけた頭で現状理解に勤しんでいた。
少し前までは。
寝起き早々に聞かされた言葉に、現状理解の努力はすぐに放棄され、思いのままに口を開いた。
「卑屈、偏屈」
いきなり届いた言葉に、カエサルは頭を跳ね上げ、目を見開いたまま数秒停止していたが、しばらくすると拗ねたような表情を見せた。
「起きていたなら言いなよ。なんか、趣味悪いよ」
「起きた」
「……」
のそり、とエルディリアが起き上がる。
カエサルは、思わず身体が強張るのを感じた。
エルディリアは、ベルツドール。
昨日から知っている事実が、頭の中で警鐘を鳴らす。
世界に5つあるという接点からのみ行き来が出来る、魔界の住人。
魔族の血を継ぎ、過去に魔王を輩出した。
そして、ジークフリートの初代の王を殺した家系。
その後、長い間迫害され、エルディリア自身は王家によりどこかに封じられていたらしい。
王家に、自分に、害を与えない保証はない。
その考えが、カエサルの鼓動を急激に早めた。
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