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「どうかした?」
「……君、ベルツドールでしょ。封印されてたって聞いたんだけど」
「そうよ」
大きなソファーに足を乗せたまま、ぺたりと座り込んだエルディリアが、こくりと頷く。
「……だからさ、王家に封印されてたんじゃないの?」
「そうね」
聞きたいことを聞き出せずに焦れているカエサルを、エルディリアはぽかんと口を開けて見つめている。
頭に人差し指をあて、眉間にシワを寄せるカエサルを理解できない様子だ。
「あのさぁ、君。理不尽さとか、感じてないの?」
「なんで?」
「なんでって、君は、何もしてないんでしょ?」
「うん。だから、なんであなたがそれを気にするの?」
「……は?」
「あなたも、何もしていないわ」
そう言って、エルディリアは薄く微笑んだ。
それを呆気に取られて見つめていたカエサルは、唐突に、エルディリアが王宮に居ることを不自然に感じた。
人間に、見えない。
人間というには、纏う空気が薄すぎる。
人間というには、石のような瞳が不自然だ。
挙げていくとキリが無い、微かな人間との差異を、今のカエサルは強く感じた。
人間の血が濃く混じった魔族でさえ、人間では無いと感じてしまうのだ。
純粋な魔族ともなれば、いったい、どのようなものなのだろうか?
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