36人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
「あなたと私。直接は関係ないの。あなたの先祖を私の祖父が殺したけれど、あなたがそれを気にしないなら、私はあなたの臣下。ただ、約束と主従だけの繋がり」
「約束?」
「そう。私の祖父、初代国王を殺した魔王。あの人と私の約束」
「……」
エルディリアの紫の瞳を見ていると、意識が薄くなっていく。
半透明の膜を張ったような視界と音。
響くようで、すぐに消える。
エルディリアが、何か魔法でも使ったんじゃないか?
そんな想像が働く、奇異な五感からの情報を、カエサルただ受け入れていた。
「なんの、約束?」
定まらない視界の中にエルディリアを入れて、先程から気になっていた事を尋ねた。
「主を持ったら、主の為に働け。例えば、主が泣いて拒んだとしても、主が望まなかったとしても、主の為と思ったなら、嫌悪するようなことも、苦しいことも……やりなさい。主の望みを、最良で叶えなさい」
「そう」
不可解な感覚からは、未だに解放されない。
考え事など出来そうにない状態なのに、カエサルはエルディリアの言葉を考えていた。
昔読んだ物語の、悪魔との契約のようだ。
代償のない契約。
ただ、ある時、確実に徒になる。
拒んだら、どうなるだろう?
最初のコメントを投稿しよう!