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「俺に拒否権はあるの?君の主人にならないっていう選択肢」
「……私を五柱に選んだのは、あなたでしょ?」
それは、正しくだ。
選び方はどうであれ、カエサルはエルディリアを選んだ。
過程を問題としないのであれば、その結果は動かない。
「それはどうしようもないか。じゃあ、質問。君は俺を王にしたい?」
カエサルの問いに、エルディリアは迷わずに首を横に振った。
「王にしたいとは思わないし、それを重要だと感じないわ。でも、例え王でなくとも、私はあなたについて行く」
「……君は、悪魔だね」
「否定は、しないけど」
エルディリアは、不快そうな表情で、拗ねたようにカエサルを見上げた。
「拒否権はあげないけど、選択肢ならあげる。私の知り得る全てを知るか、何も知らないか」
「なにそれ」
「たどり着くのは同じよ。知らずにその場に行くか、知ってその場に行くか」
「知らないのに、たどり着くとか無理じゃないの?気持ち悪いし」
カエサルは、すでに地に足のつかない不自然な感覚にも慣れ、目の前の娘に対する不信感さえも慣れている。
逃れられない契約は、すでに済んでいる。
ある種の諦めの境地だ、とカエサルは心の中でうなだれた。
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