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「王になるにしてもならないにしても、あなたの行く先に障害があるのなら、取り除くのは、私の仕事でしょう?」
「そうだね」
「私が排除するものや見過ごすものは、綺麗なものばかりとは限らない」
「ああ」
「悪人ばかりを排除するわけじゃない。一般的には、私が悪人になることもある」
「……」
「でも、あなたのために排除する」
それを、知りたい?
エルディリアは、静かに問い掛けた。
理解させられた言葉の意味に、カエサルは掌で顔を覆った。
「知らなければ、ただの馬鹿になれるってことでしょ?」
「知るのなら、それを抱えて生きなければならない」
行き着く先は変わらない。
辿る道だって、いくつも用意されているわけじゃない。
「君は俺の望みを、最良で叶えようとしてくれるんでしょ?」
「そうね」
「例えば、俺が何処かに行って、誰とも関わらずに生きたいって言ったら?」
「関わりそうなものを排除して、あなたが死ぬ瞬間まで、気づかれないように見守るだけね」
「それで、俺は誰かが排除されているというのも知らずに、一人寂しく死ぬのか」
「知りたいと言うなら、排除した人数も背格好も、人格だって家族構成だって教えるわ。事後報告だろうけど」
死体を突き付けられて、知らなかったと喚き、嘆くのが愚かか。
死体を背負って、詫びながら這いずるのが愚かか。
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