魔王の血縁

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「どちらを選んでも、私はあなたから何もとらないわ。無償よ。これが、私があなたに捧げるモノ。あなたが私の主」 細かい命令通りに動く手駒ではない。 与えられる命令は、酷く大まかで、ほんの指針でしかない。 その中で、エルディリアはカエサルの為にカエサルが望まない道を選ぶこともあるだろう。 確実に、目的に向かうために。 「訂正する。君は悪魔じゃない。例えば今、悪魔が現れて、俺の願いを叶えてくれるって言っても、俺は君がいい」 おかしくなった。 カエサルはそう感じていた。 流れるままに、流されて生きていければいい。 そんな風に考えていたのに、今はその姿の片鱗さえも掴めない願いを、叶える方法を手に入れようとしている。 自嘲めいた笑みを浮かべて、カエサルはテーブルから腰を浮かし、エルディリアの耳元に口を近づけた。 「エルディリア=ベルツドール。今日から……いや、ちょっと前から、俺が君の主らしいね。どうぞヨロシク」 「……エルでいい」 「そ?じゃあ、エル。さっきの答えを聞いてくれる?俺は――」 耳元ではっきりと告げられた言葉に、エルディリアはしっかりうなづいた。 天の真上近くなった日の光が窓から差し込む。 そんな光を目の端に留め、清々しく晴れた笑顔のカエサルは、エルディリアを手招いて部屋の扉に向かって歩きだした。
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