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廊下が騒がしい。
その騒がしさに、寝ぼけた頭で上半身を反射的に上げ、ぼやけた頭を抱えるカエサル。
カーテンの閉めきられた自室は、うっすらと明るく、ワインレッドのカーテンがぼんやりと光っていた。
ベッド脇の時計は、未だ5時にもなっていない。
エルディリアは、昨夕ティエマに捕まり、何処かへ連れ去られた。
おそらくティエマの自宅だろう。
服がどうのとか、食事がどうのとか騒いでいた。
ティエマの口紅を頬につけたエルディリアが、引きずられて行く様を、呆然と見送った記憶が新しい。
「おはよう、王子さん」
ノックも無しに、たたき付けるように開けられた扉から、埃なのか木屑なのか判断不可能な粉が舞っている。
サマル=クレスタだ。
早朝の登場に軽い怒りと呆れを覚えながら、入り口を見る。
騎士院の制服も、髪型も昨日と変わらず完璧なサマルのほかに、シエルシエが見えた。
申し訳なさそうな表情で、サマルの後ろに立っている。
「朝から、なに?」
苛立ちを隠す事なく発した言葉も、サマルは気にした様子はない。
カエサルの傍まで、許可もとらずにあっさり歩を進めた。
「まぁ、我が王子殿下に提案だな。拒否権はないが……」
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