36人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
拒否権がないなんて、今に始まったことではない。
サマルの入室から拒否権を行使したかったが、それはもはや叶わぬ願いだ。
もう、勝手にすれば良い。
ただし、早く出て行ってくれ。
そんな思いを顔に出し、シエルシエが昨夜整えた服の一番上にある上着に袖を通し、ベッドから出た。
「で、なに?」
エリヤのためにしか存在していなかったテーブルと椅子の、窓側の椅子に座り、上着のボタンをしめた。
全てのボタンをしめ、顔を上げると、いつの間にか、サマルは向かいの椅子に、シエルシエはカエサルの斜め背後に立っている。
「王子さんにな、護衛を付けようと思うんだが」
「あぁ、そう」
「嫌がらないんだな。まぁ、王子さんの護衛は、俺の仕事だと思ってはいるが、護衛たるもの常に傍に居ないとならない。俺は、それが出来ない」
「そうだろうね」
「で、俺が信頼できる奴に、普段の護衛を任せようと思う」
「誰?」
「連れて来てる。おーい。イース!」
拒否権がないのに、拒否をするのは、ただの時間の浪費。
さっさと帰って貰って、もう一眠りしたいカエサルは、自分でも驚くほどに素直だ。
誰が開けても軋む扉が、音も無く開いた。
最初のコメントを投稿しよう!