元暗殺者

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拒否権がないなんて、今に始まったことではない。 サマルの入室から拒否権を行使したかったが、それはもはや叶わぬ願いだ。 もう、勝手にすれば良い。 ただし、早く出て行ってくれ。 そんな思いを顔に出し、シエルシエが昨夜整えた服の一番上にある上着に袖を通し、ベッドから出た。 「で、なに?」 エリヤのためにしか存在していなかったテーブルと椅子の、窓側の椅子に座り、上着のボタンをしめた。 全てのボタンをしめ、顔を上げると、いつの間にか、サマルは向かいの椅子に、シエルシエはカエサルの斜め背後に立っている。 「王子さんにな、護衛を付けようと思うんだが」 「あぁ、そう」 「嫌がらないんだな。まぁ、王子さんの護衛は、俺の仕事だと思ってはいるが、護衛たるもの常に傍に居ないとならない。俺は、それが出来ない」 「そうだろうね」 「で、俺が信頼できる奴に、普段の護衛を任せようと思う」 「誰?」 「連れて来てる。おーい。イース!」 拒否権がないのに、拒否をするのは、ただの時間の浪費。 さっさと帰って貰って、もう一眠りしたいカエサルは、自分でも驚くほどに素直だ。 誰が開けても軋む扉が、音も無く開いた。
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