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「王家の敵」
「正解。しかも、暗殺者だ」
笑顔で答えるサマルは、昨日と変わらない。
変化し続けるのは、元々さほどないカエサルからの信頼だ。
「シエル。二人とも追い出していいよ」
「……畏まりました」
「え、ちょっと、シエルちゃん。畏まらないでよ」
「クレスタ将軍。私は、将軍を信頼しておりました。とても、残念です」
本当に残念そうな表情を見せ、シエルシエはサマルの前に立った。
「サマル。だから無理だと言っただろ」
今まで沈黙を保ってきたイースが、見兼ねたとばかりに口を開いた。
こめかみを押さえ、眉間にシワを寄せる姿は、呆れ果てたことを、表現している。
「いや、イースは雇われ暗殺者だったんだ。私怨じゃないし、騎士院入る時に、雇い主は始末した。暗殺の時も、王子さんの部屋に入る前に俺が捕まえたから、それを知ってるのは、騎士院の上層の一部だけ。なにより、俺はイースを信頼できると思ってる」
「……だからって、未遂でも暗殺者を、ターゲットの護衛にする?普通」
「暗殺技術を持った者が、要人の護衛に就くのは、少なくないと思いますが、今回は私、賛成しかねます」
サマルの必死の訴えも、カエサル本人と、五柱として正しい反応を示すシエルシエにばっさり切り捨てられた。
当事者のイースでさえ、どこ吹く風といった様子だ。
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