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「だめか……」
「サマルはいけると思ったわけ?冗談だろ?」
「王子さん、辛辣だな。イースは強いし、ここ数年の王家絡みの事件を密かに片付けてたのはイースだ。頭も良い。護衛には打ってつけだと思ったんだけどな」
頬を掻き、困ったように笑うサマルに、呆れたような視線が二つ向けられている。
シエルシエは困惑顔をするだけで、呆れるとまでは行かない。
そうなると、呆れた視線はもちろん、カエサルとイースのものだ。
「王子。信じられないのは重々承知していますよ。だけど、またジークフリート王家に徒なすつもりはない。誠心誠意お守りさせてもらう」
信頼には足りないだろうけどさ……
口の中で小さく呟き、イースは膝をついた。
「……まぁ、いいよ」
「王子!」
意外なほどにあっさりとカエサルの口から出たのは、了承の返事。
一度、拒否の返事を見せていた事に安堵していたシエルシエは、驚きを隠せずに、悲鳴のような声をあげた。
「どうせ、誰かは護衛につくんでしょ?ならべつに、誰でも良いや。って思っただけだよ。元暗殺者だろうとね」
「……王子がそうおっしゃるなら、私が反対しても無駄なのでしょうね」
まぁ、無駄だね。
軽い口調で答える己の主に、肩を落としてシエルシエは一歩後ろに下がった。
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