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「アンタは確かうちのクラスの渋沢弥生だね?」
あれが渋沢弥生か……。
遠くからは何度か見たことあるが、こんなに近くで見るのは初めてだ。噂通りの容姿だが、目がすごくつりあがっている。その目で教師を睨みつけているのだから、この部分だけ見れば性格がいいとはとても思えない。
「そうだが、何か?」
性格も噂通りのようだ。詫びる所か教師相手にあの目つきで、あの言葉遣い……。
私はあなたよりも上流階級なのよ。と言いたそうな顔をしている。
「おいおい、遅れてきてその態度はないんじゃないのか?」
「今日は始業式だけなのではないのか?」
「始業式だけなら遅れてもいいとでもいうのかい?」
「そのとおりだ」
口の悪い女同士の戦いが始まりそうな予感……。
そう思った時、タイミングよくホームルームを終えるチャイムが鳴った。それと同時に緊迫した空気が途切れた。
「ちっ……今日は許してやるが次はないと思っておくんだね?」
それだけ言い残すと久留間は教室から出て行った。まだ何か言いたそうな顔をしていたのは気のせいではないだろう。その原因を作った本人は、何事もなかったかのように自分の席に着き腕を組むと真っ直ぐ何かを睨みつけていた。
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