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市で賑わう、エンセルト国城下町。
商人が店を開き、来る人来る人を勧誘しては品物の購入をせびる。
店は商人が主に開いているのだが、中にはぼろ布の上に少しでも稼ぐため乏しい材料を品物とし販売する貧乏人、奴隷的身分の者もいる。
商人の物に比べれば特安な値段だが、如何せん質や身分の問題で見向きもされない事がほとんどだった。
「誰か、お買い上げください!お願いします!」
そう叫び呼びかける彼女もまた奴隷身分であり、母親と共に食いつないでいくための金銭を得ようと必死だった。
だが、無情にも誰1人彼女達の前で足を止める者はいない。
「うっ…うっ……お願い…します……から……」
泣きながら訴える。
しかし母親が諦めたのか、布をたたみ片付け始めた。
「…っ、お母さん……」
「もう…いいんだよ…奴隷でも、やっぱり働いている方が幸せなのかねぇ…」
荷物を抱え、市を去ろうとした、その時
「ちょっと、待ってくれないか」
後ろから声をかけられた。
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